2008年07月15日

アル犬のこと その3



僕的に思う、人間 対 犬    
                 犬 対 人間  
                            人間 対 人間


その思いを、一匹のレトリバーを通して書きつづった、「アル犬のこと」 最終話



再び訪れる事となった、佐賀大和で出迎えてくれたのは、やはりコイツだった。

追記をUPする前に、もう一度過去ログを読んでみて下さい。


無論、興味無い方はコメント不要。   スルーOKで。


アル犬のこと その1 http://sus441.ikamaika.net/e60103.html
アル犬のこと その2 http://sus441.ikamaika.net/e60252.html






6月末日 僕は再び佐賀大和に降り立った。

心と身体のケアをしてもらう為、色んな人に無理を言ってここまで来たのだ。

昨年訪れてから、既に半年以上が経っている。

草木も青々と茂るように、高校生が社会人となるように、大人になった姿でアルは僕を出迎えてくれた。



僕の作った犬小屋は、だいぶ愛着が湧いている様子だったが、現存している事自体が今までの経緯から奇跡なのだ。

その小屋の屋根の上が、アルの「マイフェイバリット」らしく、
深夜に到着した見知らぬ車にも、「吠えず」にジッとたたずんでいた。

もちろん番犬としては【不審者】を警戒しなくてはいけないのだが、
朝から晩までお客様が絶えない療術所の前に座らされていることは、
「人間を怖がらないようにする」為の、いわば修行の場なので、これでOK。


それに、この辺は未だ「玄関に鍵を掛けない」外出にも近所の目がある、非常に豊かな由緒正しき「日本の田舎」なのだ。


久しぶりに会ったアルは、自分の匂いがしない不審者にちょっと戸惑いを見せたが、
名前を呼んでもらえた事で「安心できる相手」と察したんでしょう。

すぐに「ハッ・ハッ」と口を開けて舌を出し、尻尾を振って警戒を解いてくれた。

ここで喜んで吠えると『おとうちゃん』から、キツーイ叱咤があるので、深夜の挨拶としてコレは「100点」な対応かな。

もっと驚くことに、ケアをしている時も、寝ている時も、去年とは比べものにならない位「吠えない犬」になっていた。


2年前には、とにかく「アルが鳴き・吠える声」と「鳥屋サンが叱る声」とが交互に来る「賑やかな夜」だったが、
今は裏庭に繋がれている「彼ら」のように、気配さえも消す静けさだ。


朝になって、再び驚いた。


アルは、立派な「成犬」に育っていたのだ。


食が細く、なかなか大きくならないと鳥屋さんも心配していたのだが、
ここ最近は、食べ残しも少なくなり、もともと鎖につながれていても運動量は半端じゃなかったので、
二の腕も太くなり、肩もガッチリしてきた事で、体重以上に大きく見えたのかもしれない。


さっそく「散歩」に繰り出したかったのだが、あいにくの雨。

ケアも午後の夕方からだったので、取りあえずは骨休めにと鳥屋サンが昼食に誘ってくれて、
そのあとは大和名物の「白玉饅頭」でお茶しましょう。と

そして、ここで重大な事実を知る。



「ケイは、もう長くない」


病気が進行して、お腹に水が溜まり心臓に負担が掛かっている。
これで倒れたら、五分五分の手術を受けることになるが、おそらく併発している病に打ち勝つ体力は無いだろう・・・と。



ショックだった。

一番元気で明るく、ジャンプ力が自慢のケイちゃんが、今はもう「散歩にも行けない状態」だ。

犬は人間の4倍の速さで時間が進む。

僕にとっての半年は、彼女にとっては2年以上「病気が経過」したことになる。

犬を育てる事に無知なペットショップに生まれ、育ち盛りに「育つことを許されない」育て方をされてしまったケイちゃんは、
どんな犬でも掛かる可能性がある、一般的な病気にも「致命傷」となる身体にされてしまったのだ。


顔はガリガリなのに、お腹だけが異様に膨れたケイちゃんを、僕はまともに見る事が出来なかった。

これが事実であることを認めたくなかった。

「死」と言うものを匂わせている姿を直視出来なかったのだ。



僕もいずれ老いぼれとなり、伴侶もまた歳を取って朽ちていく姿を、今は素直に考えることが出来ないが、
いずれ気が熟した時には、今と違う感情で事実を受け止めることが出来るのだろうか。。。


人間はこの為に時間の進みが遅いのか?と思えるくらい、ケイちゃんが病んでいる姿が現在の僕には辛かった。





落ち込んでいる僕に気を使って、鳥屋サンはとても良いことを教えてくれた。

「実はね、ユキちゃんがお嫁に行ったんだよ。」

「昔から仲の良かった友人が、ずっと一緒に飼っていた犬の古株が死んでしまい
残った一匹の落ち込みが半端じゃないので何とかして欲しい・・・と相談を受けたので、
『これはもう、ユキしかいない』と、一緒に遊びに行ったら、一瞬で意気投合してね。」

「そのまま預けて帰り、その後のユキにも動揺がないから、一件落着だ。」

僕が知る「ユキちゃん」は、愛想がよくて頭も良い、凄く出来の良い犬だったが、まだ2歳になったばかり。
お嫁に行くのは早いんじゃないかと思ったが、

鳥屋サンいわく「犬にも、それぞれの適齢期“旬”」があるそうだ。

ケイちゃんは、身体が健康だったら普通に適齢期なのかもしれないが、それまでの経緯から“旬”もっと先立ったろうと。そこへいくと、ユキは身体は小型ながら健康そのもので、
気も熟しているから立派に「他の犬と仲良くなれる」らしい。


「それに、アイツは俺が教えるより早く≪察する≫ことの出来る、頭の良い≪大人の魂≫を持った犬だ。」

「俺から教える事は、もう何も無い。巣立つタイミングを神様が与えてくれたんだと思うよ。」



今朝、ユキが居ない犬小屋を見ても、僕は何の違和感も感じなかった。


この話を聞いても、寂しさや悲しさも浮かばない。

ただただ「納得」  

それくらい、ユキは他の犬とは別格だったのかもしれない。




あくる日、天気は回復し、僕は犬たちを一匹づつ散歩に連れてった。


メグは相変わらず気分屋で、1地番先に連れて行こうとしてもナカナカ傍に来ない。
そして、行けば行ったで好き勝手な方に一人で勝手に歩いていき、
たまに僕の様子を伺い、大丈夫だと解るとまた勝手に歩きだす。
まるで、磐田の家に居る彼女のようだ。

鳥屋さんに
「アンタが≪好きにしていいよ≫≪僕は怒ったりしないよ≫って空気をまとっているからだよ!」
「俺ん時は凄く従順ですよ。」と笑われた。


コテツは、ガタイはデカクなったけど、相変わらず子供だ。
好き勝手に歩きまわるのは初めの10分ほどで、すぐに「どっち行こうか?ねぇどっち行く??」と数秒単位で振り返るから、
僕のアンダーアーマーは、ヨダレだらけ(笑
ちゃんと≪主人との間隔を開けて≫歩かなきゃね。

グラウンドで放しても、スグに僕の1m以内に戻ってきてしまう。 
頭をなでると、すぐコロン・・・と横になってしまう甘えん坊だ。


放たれると戻ってこない、躾が行き届いていない犬が多い中、
鳥屋さんの少ない時間でよくここまで躾けたものだ。。。。


「いいや。コテツは特に散歩での躾はしていない。」

コテツは普段の接し方で主人が誰なのか、主人の元を離れるのが、いかに良くないことかを親のテツから学んだんだと思う。」

「テツは賢い犬だから、囲いが壊れていても外に出たりしない。」「不用意に吠えない。」「唸らない。」
「この住宅地に引っ越すまで、テツにはリードを結んだことすらない。 リードが必要無いんだよ。」

「その子供なんだ。資質が無いわけがナイ。」

「犬でも親を見て育つんだ。 ワガママな子供は、何を見て育ったか。自ずと察してほしいね。」


テツは裏庭の広いスペースを悠々自適に・・・いや、最近引き取られてきた、仔犬の“サム”が時々じゃれてくるから、うっとうしくも時々遊んでやる。
ワザワザ敷地の外に行かなくとも、この一帯でテツに敵う犬は居ない。まさにテリトリーなのだ。
僕の出番はない。


最後に残ったアル。

僕がリードを持って外に出たら、「ウキャン・キャン」と吠えて、鳥屋さんに一括された罰で最後になったのだ。

飛び跳ねてはしゃぐアル。 僕も嬉しい。

リードを繋ぎ・・・「ヨシ!」の合図で、一目散に駈け始めるアル。 

2周僕の周りを回って、飛びついてくるアル。

ずいぶん御機嫌だね~(笑



けれど、一般道に出れば僕の右斜め前を、キチンと主人のペースに合わせて歩く事が出来る。

初めて会った一昨年とは、全く別人になったね。 曲がり角で少し振り向き、行く道を確認できるようにもなったんだ。。。。


十分に遠回りをして遊んだにも関わらず、

グラウンドでは、「追いかけっこしよう! 鬼ごっこしよう!」と、誘ってくるアル。

せっかくだけど、今回は膝が悪くて、走る事は出来ないよ。


また次にな。







「次は無い」



  「え?」 


整体の最中、散歩の様子を聞いていた鳥屋さんが、アルについて語った僕に間髪入れず答えた。


「実は、アルを引き取りたいという家族が現れたんだ。」


「旦那さんも奥さんも、此処に通っている人なのだけれど、とても犬が好きでいつもアルと遊んでくれるんだ。」

「アルが、普通の犬じゃない頃から知っている。」


その人が、最近「折居ってお話が・・・」というので聞いてみると、

「アルのような犬と暮らしたい。」

「ずっとアルに感じが似ている犬を探したのだけれど、見つからない。」
「きっと、鳥屋さんに育てられた犬だから、他とは違うんだろうと思った。」

「なので、鳥屋さんが“これは!”と思う犬を少しの間だけ“アルのように育てて頂き”、その子を譲ってほしい。」
「勝手なお願いだとは思うけれど、ここ数日間その事ばかり考えて、こうして話している。思いつきなんかじゃない。」と。



鳥屋さんは、その人の顔を見てスグに答えた。

「アルを差し上げる・・・じゃ、ダメなんですか?」

その人は、鳥屋さんの目を見て答えた。

「それは、最上の望みです。」

鳥屋さんは、その人の目に涙を浮かんでいるのを確認し、こう伝えた。

「アルは、何時でもお渡し出来ます。 アルもその時を待っているでしょう。」


その人は、鳥屋さんに両手で握手を求め、大粒の涙で診察台を濡らした。





「この人も、#441ちゃんに負けないくらい、アルに愛情を注いていた。
だから、一昨年~去年であんなにも成長する事が出来たんだよ。」

僕の複雑な表情を見て、少しやさしい口調で話す。




この話は、先週のことでね。

#441ちゃんが急に「佐賀に来る」というの聞いて、やはり導かれたか。。。と思ったよ。


梅雨明けにはアルは引き取られる。
大宰府という、ここから遠い街だ。そうそう会いに行く事も出来ないでしょ。


今日の散歩は、2人にとって最後の時間。

お互いの思いが引き合って、この足の痛みという形で導き会ったんだと思う。


アルは感無量で帰ってきたに違いない。
それは何も、久しぶりに遊んでもらったからじゃない。
十分に別れの挨拶をしたからだ。


なおも表現にしにくい、思いを言葉に出来ない僕に、


「今夜は、少し痛いよ」と、鳥屋さんは膝の関節に手を掛けた。


そりゃあもう、気絶するような悶絶する痛みに、僕は大粒の涙が出た。




翌朝、あんなに気持ち悪かった関節が、嘘のようにスッキリしている。

階段を上り下りしても、コキコキ鳴ることも無い。



「4日しかなかったからね。昨日はちょーっと痛かったね(笑」

最後に体全体をケアしてくれ、その足で高速バスの停留所まで運んでくれる約束の鳥屋さんは、すぐに着替えに部屋に戻った。

僕は、裏の犬たちを順番に見回り、最後にアルの所に行った。


アルは少し他人のふりをしていた。


じゃ、最後に写メ撮ろうか。 

そう言って僕がカメラを向けると、アルは「いや・いや」と、前かがみに伏せて、前足をバタバタさせた。



「判ってるんだね。もう行ってしまうって事。」 着替えを終えた鳥屋さんが言う。


「こういう仕草をするんだから、もうどこの家に行っても可愛がってもらえるよ。アルは。」

アルは、裏庭のテツ一家のように集団の中にいるより、一人で一家族の一員として暮すほうが向いているはず。

犬はね。主人が居て自分が居るってポジションが、生まれながらに持っているんだ。

それを人間が甘やかすことによって、一番上に居たり、上下関係の途中に居たりするから、人間社会で「厄介者」とされてしまう。アルは、ここでの生活で自分が置かれているポジションに幸せを感じ、居心地が良くなっている。

犬として本来の場所に戻ったんだ。


犬らしくなって、人間らしくもあるアルは、もう俺の力なんか要らない。 
十分に他の家でも「家族の大切な一員」としてやっていける。





「退院ですね」


アルが他の家族の一員として、ここを離れる事をどう表現したら良いか解らなかった僕が、初めて頭に浮かんだ言葉がこれだ。


「そうだね。心が病んだ犬:アルは、長い入院生活を終え晴れて「鳥屋療術所」を退院できるわけだ。」



おめでとうアル。 

お前は、ようやく本来のあるべき姿に戻れるんだ。 こんな嬉しい日はないね。アル。



そうだ。退院祝いに、僕から花を贈ろう。 いっぱいイッパイ大きな花束を。

僕の心の中は、オマエに贈る花束で一杯で胸が詰まりそうだよ。アル。



おめでとう!アル。 僕から花を贈ろう。 いっぱいイッパイ大きな花束を。



心から愛した犬 アルジャーノンに花束を!



この記事へのコメント
うう。。犬好きな僕としては過去ログ読み返すと涙がでてきます。。

ちなみに捨てられた犬を拾い続けて今五匹なり♪
Posted by flat at 2008年07月15日 19:33
過去ログ、初めて読みました。

む~ん、戦いですねぇ。。。
愛しているからこそ出来る戦い。

少しでも妥協したら、ワンちゃんはすぐに察知しちゃうし、ある意味、終わり無き自分との戦いかもしれません。

早くも続きが気になる。。。
Posted by カンナム at 2008年07月15日 21:54
>flatさん、カンナムさん

亜流な話題に、嬉しいコメントありがとうございます。

実は、別のパソコンで執筆してたら保存中に電源が飛んで、
データーの半分が文字化けしてしまいました(><)

今夜中にUPしようと思ったのに~!!!

スイマセン。 
もったいぶってる訳じゃなし、大した内容じゃないですが、もう少しお待ち下さい。

あ~あ。ぶっ壊れたデーターを復元するソフトって無いのかね。。。トホホ(泣
Posted by KSR@#44 at 2008年07月15日 23:53
多分、思い出たは、2台かな?車種まで言うと分かっちゃうしなぁ〜。
入手ルートは、裏ルート、表ルートじゃ、売り出さないしね初乗りしたときは、ど肝抜かれた。加速が、いのしし。そこそこ乗れるようになったけど
Posted by ゆうぼぅ at 2008年07月16日 00:42